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福岡高等裁判所 昭和38年(ラ)50号 決定 1963年4月24日

抗告人 藤井太郎(仮名)

主文

本件抗告を却下する

理由

民法第一〇〇四条、家事審判法第九条第一項甲類三四号、同法第八条家事審判規則第一二〇条第一二二条以下の規定によつて家庭裁判所のなす遺言書の検認は、遺言の執行前において遺言書の状態を確認し、後日における偽造変造を予防し、その保存を確実にならしめる目的でなされるものであつてその実質は遺言書の形式態様等専ら遺言の方式に関する一切の事実を調査して、遺言書の状態を確定しその現状を明確にする一種の検証手続で、遺言の内容の真否、その法律上の効力の有無など遺言書の実体上の効果を判断する審判(裁判)ではない。(大正四年(ク)第二七号同年一月一六日大審院決定。大正七年(オ)第二六〇号同年四月一八日大審院判決。昭和一三年(オ)第五四八号同年七月二〇日大審院判決各参照)。したがつて相続人その他の利害関係人といえども検認に対し抗告をもつて不服を申立てることはできない。

このことは家事審判規則第一二一条において、遺言書の確認に対し利害関係人が即時抗告をなしうることを規定しながら、同規則中遺言書の検認に対し即時抗告を許容する規定を欠くことからもうかがえることである。また抗告人は前示検認に対して家事審判法第七条非訟事件手続法第二〇条の規定によつても、抗告を申立て得ないことは、前説明のとおり検認が審判(裁判)でないということから当然出てくる結論である。記録によれば抗告人は遺言者藤井公吉の長男であることが認められるけれども、前示のとおり検認に対しては抗告をなし得ない以上要するに本件抗告は不適法であるから却下すべきものと認め、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 池畑祐治 判事 秦亘 判事 平田勝雅)

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